開発ものがたり

Welcome to Muller Guitars

Developing Story

開発ものがたり

 

北海道旭川への旅

私の知り合いが、北海道旭川のご両親のもとを訪ねる事になったのは、今から数年前のこと。その際に、彼のお父様の紹介で地元旭川の地場産業や地元青年会などを通して、家具メーカーの工場・ショールーム視察や共同出展のショールームを見学する機会を設けていただくことになったのでした。

旭川は、日本の五大家具産地(*1)の一つとしてご存知の方も多いのではないでしょうか。旭川は、家具産地のほかに、良質米、リンゴ、サクランボ、そば、などの産地としても知られています。

また、テレビ等で幾度となく紹介されている旭川市旭山動物園などの人気にあやかり観光地としても道内で二番目に人気のある地区だそうです。壮大な大雪山連峰や神秘的な美瑛の青い池をはじめ、ちょっと足をのばせば富良野の美しい景色にもふれられます。

*1:旭川家具(北海道旭川市)、静岡家具(静岡県内)、飛騨家具(岐阜県高山市周辺)、徳島家具(徳島県徳島市)、府中家具(広島県府中市)
大川家具(福岡県大川市)。代表的な家具産地は六地区あり。
 

地元の家具メーカーや共同出展のショールームへ

雄大な自然に囲まれた旭川で、知人がまず最初に訪れたのは、(株)匠工芸さんです。近代的な家具工場とショールームを併設した社屋で約40名の方々が働いています。カラマツ林に面した広々とした本社社屋から見渡せる大雪山連峰は絶景です。工場内で、説明を受けながら、職人さんたちの作業風景を間近に見ることができたそうです。

次に訪れたのは、旭川の30社を超す家具メーカーが共同出展しているショールームとのこと。各メーカーの主力商品の常設展示をはじめ、家具選びやインテリアデザイン、リフォームなのどの相談もできるそうです。また、常設展示の既製品以外にも特注家具に対応しているメーカーさんもいらっしゃるようです。
 

最初に訪れた匠工芸さんの写真に一枚の楽器が

知人が旭川から戻り、数日後「お土産話しをつまみに飲み会でもするか」ということになり、ミディアグルーヴに集合。旭川の家具やクラフトに関連した工場、メーカー、工房、などを紹介したパンフレットや各社のカタログ、旭川工芸デザイン協会の案内パンフレット、などと共に、数百枚の写真を携えて知人が訪ねてきてくれました。

現地で撮影した工芸品や家具の写真を一枚一枚見ていると、今まで見たことのない一本のギターが写っているではありませんか。後でわかったのですが、このギターは、フェンダー社のStarcasterモデルを手本に匠工芸の職人S氏がつくったものだったのでした。

私は、この写真を見るなり、すぐに本物のギターを見たくなり、S氏に連絡をとってみるとにしました。タイミングよくS氏から「これから取り掛かろうとしている新作のギターがあるので、それを送るのでしばらく待っていてほしい」との返事をいただくことができました。
 

試作品のテレキャスタータイプが届く

S氏に連絡してから数ヶ月後、待望の新作ギターがミディアグルーヴの事務所にやってきました。丁寧に梱包されたケースの中から現れたのは、テレキャスタータイプでした。眺めているだけでうっとりするほど「美しいギター」です。私は、今までテレキャスタイプのギターには全く関心が無かったのですが、このS氏のテレキャスは、今までの私の無関心さを払拭させるだけの魅力と存在感がありました。

画家の岡本太郎さんだったか「「きれい」と「美しい」の違いは何だかわかるかね?「きれい」は何かと比べるもの。「美しい」は比べるもなく絶対的に美しいもの」と。少々大袈裟かもしれませんが、私の中では他に比べようもないくらい「美しいギター」と巡り会うことができたのです。
 

試作品のテレキャスタータイプをプラグイン

テレキャスを手に取ると、まずは木肌のスベスベ感にさらにやられてしまいました。塗装は、植物系オイルフィニッシュで、塗膜を形成しないので弦から伝わる木部の振動を妨げないとの考えから、この塗装方法を採用しているそうです。

さて、いよいよ試奏です。フェンダー社の小型アンプにジャックを差し込み音をだしてみることに。「ジャーン!」。セミホロウボディーの効果もあってか、程よいアタック感とひとつひとつ粒のたった弦の音がセミホロウ内で幾重にも反響し、アタック感のあるジャーンと、伸びのあるシャリーン感が気持ちよく混ざり合う音でした。

このテレキャスタイプのギターは、わたしたちにとって、ストラトを生むための、いわば記念碑的存在のギターです。試奏した瞬間から、この記念碑的存在のテレキャスタイプのギターが自分の手元から離れていってしまうなんて信じられなくなっていたのです。生みの親であるS氏に頼み込んで、テレキャスに「この事務所に留まるよう」説得してもらいました。テレキャス自身が「私もここに残りたい」と言ってくれたかどうかは…。
 

ストラトタイプの試作機製作をスタート

レオ・フェンダー氏が辿った道のように、S氏も、いくつかの試作品からスタートし、ストラトを製品として生み出させるための前段階としてテレキャスタイプのギターをつくりだしました。私たちのギターづくりにおいて、レオ・フェンダー氏と同じような道を辿り、ストラトが世に生まれる瞬間の感動や思いを擬似的にでも体感することは、とても意味のあることです。

ミューラーのストラトは、私たちなりの思いや信じる工法により生み出されたストラトタイプのギターです。一度世の中に出れば、いろいろなミュージシャンたちとの出会いがあるはずです。十人十色の厳しい意見が待ち受けているのだろうと思うとストラトタイプ1号機の方向性は後々のスタイルに相当な影響を残すはずです。そう、この方向性を徹底的に拘らないと。

試作機やテレキャスの経験を生かし、ミューラーのストラトタイプでは、できる限りネックの狂いを少なくすることを最重要課題としました。特にネックのねじれを防ぐため、ネックはワンピースに拘らず、メイプル材とウォールナット材の5ピースによるラミネート構造にしました。ネックのシェイプは、Cシェイプに近い形状です。
 

いよいよ製品版直前のストラトが手元に!

手前味噌で申し訳ありませんが「一目見てうっとり」です。(笑)

最重要課題としていたネックの状態も想像以上にしっかりとした仕上がりでした。ネックのねじれに関しては、少なくとも二年以上待たなければ様子を見ることができないと判断しています。それまでの間は、私たちのヨミを信じていただければと思います。このためにも木部の保証期間を3年とさせていただきました。

一方、試作1号機の製作から、はや3年の歳月が過ぎています。幸い、この1号機のネックは今の段階で、狂いやねじれは見受けられません。それでも、万一、私たちのヨミがはずれた場合、お客さまには大変申し訳ないのですが、一度ギターをお預かりし、ネックの調整または、ネック交換を実施させていただくことになります。

試作段階において、ネックの形状は台形に近いシェイプでした。フェンダー社のストラトキャスターやミュージックマスターなどと比較しながら、初期ロットは、最終的にCシェイプを選択することにしました。みなさんの意見が最も分かれるのがネック形状ではないでしょうか。演奏者の体格、手の大きさ、握力、ホールド感、などなど多くの感覚が集中する箇所だと思います。

次に意見の分かれる項目は、音色ではないでしょうか。音色に関し、私たちの主観によるコメントをさせていただくと、私たちの狙い通り「タイトな低域とひとつひとつの音の粒立ちがよく、とてもブライトな音質が特長」になっています。これは、主にチェリー&ウォールナット材のボディーとピックアップに採用したセイモアダンカンの影響によるものだと考えています。

また、外的要因として、気候、湿度、ギターアンプとの相性、シールド、などの影響も多かれ少なかれあることでしょう。内的要因として、前項でふれた要因意外にも、ヘッドの軽量化やネック材、ブリッジの材質など、様々な要因が重なってミューラーストラト独特の音色になって行くのだと思います。
 

タイプI完成!

タイプIの特長は、テレキャスのような小型のヘッド形状とボルトオンの面影を残すジョイント方式によるセットネックです。

フェンダー社のストラトキャスターを弾き慣れている方にとっては、最新型「タイプII」のスルーネックのような段差のないセットネックよりボルトオンの面影を残すジョイント方式によるセットネックを採用した「タイプI」の方が扱いやすいかもしれません。
 

タイプII完成!

タイプIIの最大の特長は、価格とネックのヒール部分です!

最新モデルのタイプIIは、旧モデルとなったタイプIの品質を保ちながらも、価格をグッとおさえることができました。

最新モデルのタイプIIでは、コストダウンをはかるために、木取りをする選定対象の範囲を広げさせていただきました。木材自体のグレードは変えておりませんが、タイプIと比較し、節目の箇所が若干多く見受けられる部位があります。

また、セットネックの加工方式を「3つの雇い核(やといざね)」から「2つの雇い核(やといざね)+面腰(めんごし)」に変更しました。その他の仕様は、タイプIとほぼ同一です。
 

やはり決め手は、ご自身による試奏が一番

ここで長々と主観的な説明をしていても仕方がありませんので、もし、よろしければ、実際のミューラーストラトを試奏しにいらしてください。事前にご連絡をいただければ、日程調整のうえ、弊社にてご納得が行くまで試奏していただけます。大きな音は、だせませんが、日本で三番目においしいコーヒーを煎れてお待ちしております。

また、弊社までお越しいただけない方のために、試奏用のデモ機貸出しサービスも承っております。